Step4:設計の煮詰め2 図面の起こしの実例
前回のエントリーで「ということで図面に起こしてね」みたいにしたら「そこテキトーなのかよ!」ってツッコミを喰らったぶたです。
イヤ時間なかったんすよ後半はイラストもない雑なエントリーだしその辺汲んでくださいよええすみません。
まああれじゃん?図面なんて自分が木材カットできりゃいいじゃん?義務教育でやった技術の授業?だかの範疇でどうにかなるでしょってつもりだったんだけど、ツッコまれたんで図面化の説明を試みます。
実際に図面化してくから長大な記事。ぶっちゃけたいしたこと書いてるわけじゃないから、自分で図面起こせる人は読む必要ナシ。
図面化するツール
チラシの裏にでも書いとけよ(えー
いや別にそれでも充分なことは多い。極論、各板のサイズがわかればいいんだし。とはいえ慣れるとPCで書いた方が楽だったりもする。っていうのは垂直・水平を正確に出せるし実寸で起こすのが楽だしとか色々。ソフトなんかなんでもいいから、自分の使い慣れたヤツでどうぞ。
ちなみにぶたはAdobe Illustratorに慣れてるのでコイツで図面起こします。で、図面化したら改めて3Dソフトで立体化して確認したりする。なんで最初から3D CADとか使わないかって?ウルセー慣れてねえからだよ。スピーカー作る時間が捻出できないのに、ソフトの習得なんかやってられっか。
ってことで、紙と鉛筆で十分。
強いて言うなら、内部スペースに余裕がなさそうな場合、パーツのサイズとか正確に確認する必要があったりする。なので、方眼紙とか使って実寸ベースでやった方がいいかも。
それはそれでメンドクサそうって人は、なんかのソフト覚える。最近はスマホアプリにもCAD系のツールあるみたいだし、別にCADじゃなくても実寸ベースで作業できればInkscapeとかのドロー系ソフトでもなんでもOKでしょう(僕も基本Illustratorだし)
ちなみに今回はInkscapeでやってます。
具体例としてやってみる
ってことでイメージがつきやすいように実際にやってやろうじゃねえかってことで。
前提条件
前提条件として先に完成図が見えてた方がいいと思うんで、コレを図面に起こすことにする。Audio proのAddon T3っていうBluetoothスピーカー。3.5inchウーファー + 3/4inchツイーターの2.1chもどき。Wi-Fi対応のC3ってのもある。リアバスレス型で比較的小さくてカワイイわりにいい音するらしく、Oluv氏もお気に入りの逸品。
サイズ
上記のページ下部に正面・側面・上面・背面の写真と、サイズ等のデータが載ってるので参考に。サイズは高さ115mm × 幅215mm × 奥行き135mmってことらしい。
……ん? ちょっと逸れますが
なんとなく、板厚9mmのつもりでいたんだけど。3.5inchってバッフル開口径90mくらいだよね?
この見た目を成立させるには、スピーカーユニットをエンクロージャーの内側から付けることになるわけだけど、バッフル開口径90mmに、板厚9mm× 2=18mmを加えて単純計算で108mm。実際は取り付け用のフランジとかもある。高さ115mmに収まるか?
そんなときはどうする
先にパーツを手配してたり、使いたいスピーカーユニットが決まってるとこういう事態は起こりやすい。そんな時の選択肢は3つ。
- スピーカーユニットを優先。デザイン(高さ115mm)を変える
- デザインを優先。サイズ内に収まるユニットを見つける
- どっちも譲らない。板厚を薄くしたりしてどうにか収める
今回は見た目優先でサイズ内に収まるスピーカーユニット探してみる。あった。
高出力・ウーハーユニット 3.5インチ(90mm) 8Ω/MAX30W [スピーカー自作/DIYオーディオ]
- ジャンル: 家電・AV・カメラ > オーディオ > その他
- ショップ: NFJストア 楽天市場店
- 価格: 950円
設計例にするために探しただけだから音質とかは知らん。別に勧めてるわけでもなし。
ユニット+エッジで口径85mm、全体のサイズが93mm。93mm+板厚2枚分の18mmで113mm。どうにか収まる。現物が手元にあるわけじゃないからわかんないけど、内付けするならおそらくバッフル開口径87〜88mmくらいになるんじゃないかと。一応88mm前提で話を進める。
ツイーターは空間的に余裕あるから無視して進めてもよさそうだけど、一応この辺を前提にしてみようかな。
【国内正規品】Dayton Audio ND20FA-6 20mm ネオジウム ドームツィーター 6Ω ペア BSDA002
- 出版社/メーカー: Dayton Audio
- メディア: エレクトロニクス
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内付けだと開口が33mmくらい、周囲にフランジ分12mmのクリアランスが必要ぽい。フランジが邪魔になるかもしれないけど、図面内で配置して実際の見た目を確認してみるってことで。
そんなこんなで前提条件確定
一応まとめておくと以下の通り。
- ユニット正面配置の2.1chタイプ
- リアバスレフ
- 高さ115mm × 幅215mm × 奥行き135mm
- スピーカーユニットは内付
- ウーファーの開口径;88mm
- ツイーターの開口径;33mm
まず設計計画
前回のエントリーで説明したように、まず先に板の小口の合わせ方を考える。最初に決めるのは、「最後にネジ止めする蓋をどの面にするか」
個人的な好みから言えば、この形なら底面をネジ止め面に選ぶ(ネジが目立たないので)。けど製品写真見る限り、Addon T3は背面がネジ止め。なので一応それに習うことにする。ということで、自動的に「筒状にする4面」が上面と底面と両側面部。ネジ止め蓋の「反対の蓋」がバッフル面ってことになる。下図みたいな感じ。
Addon T3の背面写真みると、背面は内寸の蓋。まあ横から見た時考えたらそうなるよね。ってことで背面の内部には取り付け枠入れることになる。
反対側の蓋はバッフル面になるんで、小口が来るのはちょっとイヤ。ってことでこっちは外寸の蓋にすることにして、筒部とは接着前提で。
筒状の部分の合わせはどうするか。置いたときに比較的目立ちそうなのは上面なので、上面と底面で側面を挟むことにする。ってことで結果こんな感じ。
実際には背面にバスレフポートや端子類の穴、上面には操作パネル用の穴が必要だけどね。その辺は図面書く時とかに。
とりあえず説明用に図を起こしたけど、実際には頭の中で決めとけばOK。
実際の図面化作業
いつも通りIllustratorでやろうかと思ったけど、Bluetoothスピーカーと無関係な有料ソフト使ってもなってことで、フリーソフトInkscapeでやってみます。実はほとんど使ったことないぞInkscape。まあでもなんとかなるでしょ。
まずちょっとスピーカーサイズのおさらい。
高さ115mm × 幅215mm × 奥行き135mm
ってことでまずInkscapeでA3以上のドキュメントを作成。別に用紙サイズなんかどうでもいいけど、T3の最長辺が横幅の215mm。この実寸が余裕もって収まる大きさが楽。
Inkscapeにいきなり苦戦
そしたらまず、幅215mm高さ115mmの四角形作る。……ん? Inkscapeって数値入力で四角形作れないの?まあ作ってからメニューバー下にあるボックスで数値入れればいいけども。
起動直後は黒く塗られた四角形になったので(環境によるのかも)、塗り(なし)と線(黒の実線、太さ0.1mm)を設定。この段階でこんな感じ。
……お? 四角形の幅と高さがそれぞれ215.100mm、115.100mmになってる?
線の太さをオブジェクトのサイズとしてカウントしちゃうのか。うーん。それってどうなのよ(愚痴
気を取り直して改めて幅と高さに215、115と入力。次以降は四角形作った段階で0.1mmの線付いてるので、数値入れればOKぽい。……と思ったけど、そうやって作成したものを「ものさしツール」で計ると214.900mmとか。どうなっとんねん。
仕方ないので0.1mmの線幅分含めて数値入力ボックスに入力して進めた方がいいかも。なんなんだこのインターフェース。
とまあ、ソフトの使い方的な話はこの辺で。
各板を書き込んでいく
幅215mm高さ115mmの四角形から書き始めたコイツは、正面図になる。ということで、正面の板(バッフル面)と接着する9mm厚の板4枚を書き込むことになる。組んだ時に見える線(小口が見えるとこ)は実線で、隠れる線は点線だと混乱しにくい。手順としては以下のような感じ。
まず上面と底面の板を書き込むと下図の感じ。バッフル面から見ると上面と底面の小口は見えないので、点線で。
絵だとわかりにくいけど、9mmの位置に横線書いたわけじゃなくて、215×9mmの四角形を書いて、上下の位置がぴったり揃う様に配置してる。位置を揃えるには整列用のツールを使うと楽できる(下図参照)。
続いて両側面の板を書き込む。これも小口見えないので点線になる。
上図の通り、上面と底面に挟まれることになるので、板2枚分の厚みを引いた長さ(というか高さ)になる。
続いて、同じ感じで上から見た図を書く。
正面図と違って、上面図では正面の板(バッフル面)の小口が見えるので実線で書かれてる。また、背面の内側に取り付け枠の点線もある。
ちなみに、取り付け枠は正面図にも書くべきかもしれないんだけど、バッフル面に接着するわけじゃないんで僕はそういうの省く。
同様に側面図も書いていく。側面図を入れたのが下図。わかりやすいように実線=黒、点線=赤にして線太くしたりしてある。実際には極細線にしておいた方がいいと思う。印刷して定規で寸法計ったりするような時、線が太いと誤差出やすいからね。
とりあえずこれで基本的なガワを構成する板の図面はOK。
ユニット開口部等の書き込み
おおよそのガワが図面化できたら、各板のサイズがわかるように数値を書き込んだり、バッフル面にユニット取り付け用の穴の位置や大きさがわかるように書き込んでみたりする。下図。
ウーファーはフランジ部も含めた93mm四方の四角形で囲ってある。径の中心位置は真ん中でいいので対角線の交点。
ツイーターを囲ってるのは円形のフランジのφ45mm。径の中心は45mm÷2に板厚の9mm足して31.5mm、0.5mmなんて出せないだろうから丸め込んで32mmってことで。
理想型と比較して調整
この状態で元のAddon T3と見比べてみると、おそらくツイーターの取り付け位置がちょっと下すぎる。こだわるならフランジがもう少し小さいユニットに変えるか、変えずにフランジの干渉部分を2mmほど削る必要がある。その場合ツイーターの径の中心も変わるから……ってな感じで微調整してく。
最終的には上面図に操作パネル取り付けのための穴やザグリ、あと背面図書いてバスレフポート用の穴なんかも書き込む必要がある。が、まあ仮の図面起こし&慣れないInkscapeなのでこの辺でカンベン。
ぶっちゃけ、紙と鉛筆で良くね?
だから言ったじゃん。ここまでの内容なら紙と鉛筆で充分。各板の縦横の長さ出しただけだから、手書きの簡単な図面とメモで事足りる。
こういった正確な実寸図面が一番役に立つのは、各パーツを組み込む内部スペースがシビアな時。今回のだと、ツイーターの位置出しを正確にやったことで、見た目のバランスがイマイチだった……みたいなことがわかる。
他にも、ユニットの奥行きを書き込んでみたら基盤と干渉してた、とか。内部スペースが限られるポータブルスピーカーだとよくあるからご注意を。